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「ねぇ利空(りく)、何か欲しい物ある?」
まん丸い月が印象的な夜。
小さな自分の部屋で勉強をしていた時、さらりとなびかせる綺麗な黒髪が目の前にちらついた。
声のする方向を見ると、そこには優しい笑顔を僕に向けるお姉ちゃんの姿があった。
「いきなり何……?」
その笑顔を避ける様に俯いて、僕は素っ気ない返事をした。
「欲しい物、ないの?」
僕の頭の上で尚もそう聞いてくる声はとても高くて、なんだか耳障り。
「……ないよ」
お姉ちゃんはいつも僕に優しくしてくれる。
優れた所が何一つない僕とは正反対で、何をするにも飛び抜けて上手な二つ年上の高校二年生。
僕がどんなに頑張っても、お姉ちゃんの様にはなれない。
優しいお姉ちゃん。
笑顔が素敵なお姉ちゃん。
お父さんとお母さんに愛されたお姉ちゃん。
「そっか……。利空、来週の日曜日楽しみにしていてね」
僕はそんな晴香(はるか)が嫌いだ。
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