転落

6/8
前へ
/113ページ
次へ
炎は弱まる気配は全然なく、真っ黒に色付いた煙をもくもくと吐き出し、天まで上っていく。 まるで、もう助からないみんなの魂を、あの世へと連れていくかの様に。 煙を追っていく僕の目に、ひしゃげた白いガードレールが小さく映った。 「あそこから落ちたのか……」 一体どうしてこんな事に? 明日は僕の高校の入学式だった。 その記念に、家族でドライブに出たんだ。 ガードレールを突き破る前にしていたみんなの会話、笑い声が頭からはなれない。 お父さん、お母さん…… 「僕を一人にしないで……」 俯き加減に目線を下に落とす。 僕の左腕に装着してあるのは、腕時計。 銀色に輝いていたかつての面影はなく、僕のものであろう赤黒い血がべったりとついていて、表面は潰れていた。
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加