プロローグ

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「お、おお…!」 只今の時刻は5時。 学校も終わり、足取り軽く帰っていた身長172センチで、少し癖っている髪の毛を持ち合わせた高校生、新騎桂汰(アラキ ケイタ)は食い入るようにある物を見つめていた。 小さな電化製品屋の前に置かれた電子レンジだ。 その下には『今ならお買い得の2980円!』の文字。 「ま、まじか…こんな物がこの世にあるとは!」 手で口を覆い、あからさまに驚いた様子をあらわした。 目を輝かせ、まるでオモチャを見つめる子供のようにそれを凝視する。 貧乏高校生にとって、こういった目玉商品は今後の生活を左右する重要なアイテムである。 「…値段は完璧。問題は質だな」 言うと、電子レンジを手に取り、あらゆる角度から観察し始める。 その怪しげな行動に、周りの奥様達がヒソヒソと何やらよからぬ噂をしていたが、新騎はそれを気にもとめない。 それほど今行っている作業は重要なのだ。
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