逃亡した者

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もう夜中の12時だというのに、町中はパトカーのサイレンが、まるで人々の安眠を邪魔するかのように響いている。 更に『パトカーについて行けば面白い事件見れんじゃね?』とか言ってる野次馬の声もかなりうるさい。 しかし、そんなことは日常茶飯事。 今更うるさいなんて言えたものじゃない。 そんな危なっかしいオーラ漂うここは東京都。 人口と『黄泉能力者』の数が日本で一番多い所だ。 そこにある小さなアパートで、一人の少年がベットの上でもがいていた。 新騎桂汰。 今年から成立高校(ナリダチ コウコウ)に通っている高校一年生だ。 「ああー…今月どうすりゃいいんだよ…」 癖っている黒い髪の毛を掻きむしりながら、唸るように言った。 さっきからずっとこの言葉の繰り返しである。 それもそのはず。 残り少ない生活費が、電子レンジに消えてしまったのだ。 しかも、修復、再生不可の状態のオンボロ電子レンジに。 本当は『俺まだまだ使えるぜ』的な物言わぬ自己主張をしている元気いっぱいの電子レンジを買おうと思っていたのだが。 「…覚えてろよあのチビ。次会ったら絶対この電子レンジ買い取らせるからな…」 言うと、意地悪そうに広角をつり上げた。
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