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「知っての通り、次元が不安定な場所にはぼーやの世界からの『漂流物』が流れてきやすい」
ジャジャの言う漂流物というのは、例えばこの遮断機のように僕がいた世界から流れてくる物の事だ。そしてその中には物だけではなく、"者"も含まれ、僕自身も漂流物だったりする。
「その漂流物に紛れて、時折『奴等』はこの世界にやって来おる」
「ああ――なるほど」
頭の容量が少なく、ひいては要領が悪い僕はここにきてようやくジャジャの意図を理解する。以心伝心には程遠かった。
「『魔物(フェイク)』、か」
「そう。"強くなる"にはうってつけじゃろ?」
言って、ジャジャはシニカルな笑みを浮かべる。あるいはここで『RPGかよ』と突っ込むのが正常な反応なのかもしれなかったが、こちらの世界の彼女にゲームを持ち出しても詮無き事だし、そして実際に彼女の言う通りなのだろうから反論する気は更々なかった。
――フェイクは、人を殺す。
そこに人間らしい理由や人間臭い目的、そんな誰もが求める免罪符など一切持たずに、ただただ純粋に、にさながら無欲であるかのような貪欲さを持って――人を殺す。
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