一日目①日常プロノメイア

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 まさしく人類の敵。昨今のエンターテイメントでは何故か忌避されがちな、完全な勧善懲悪。あるいは不完全な盛者必衰。唯一救いがあるとすれば、それはこの場所のように次元が不安定な地点にしか出現せず、そしてそこから決して外には出ないことだろう。  なので幸いなことに、この世界でバイオハザードは特に起こっていない。  まあ、それは普通の場所の話であり今現在僕達が足を踏み入れているのはいわゆる警戒区域なわけで、関連付けて思い出したみれば侵入禁止の鉄線を越えたような記憶もある。  なんてこった。  これじゃあ、さっきのついさっきまで気付かなかった僕が馬鹿みたいじゃないか。  実際その通りなんだろうなあ、なんて今まで何回抱いたか分からない感想で締めくくった――その時だった。 「来よったぞ」  ガラス玉のようなジャジャの声。次いで予定調和のように、ガラスを爪で弾いたような音が耳を突き刺す。見ると――遮断機――その空間を中心として、渦を巻きながら世界が歪んでいく。    さながらそれは、世界があるべき姿に回帰していくように。まるでそれが正しいかのように。――歪。果たしてそれは、歪んだ正しさなのか、正しく歪んでいるのか、間違って歪んでしまっている僕には分からない。
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