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「美緒、迎えに来たよ!」
アパートから、歩いて十分もかからない職場なのに、崇はいつも迎えに来る。
一緒に買い物して、一緒にご飯を作り、また、次の日。
「今日、美緒の写真先輩に見せたらさ、美人だねだって」
嬉しそうに話す崇。
「ねえ、待ち受け私にするのやめたら?バカップルみたいだし」
付き合いたての頃に撮ったニッコリした美緒の写真。
あの頃は、大好きだったな。
「良いじゃん!美緒は美人なんだから」
崇の口癖だ。
「ねえ?顔だけなの?」
「ん?どうしたの?大好きだよ」
優しく抱きしめられた。
喧嘩も、話し合いも未だにした事がない。ふわっと、崇にかわされるのだ。
崇は、きっと外見だけを愛しているに違いない。美緒が少し太るだけで気づくし、ニキビを見つけたら大騒ぎだ。
私は、人形じゃないのに。
いっそ崇は、人形と付き合えば良いんだ。
小さな寝息を立てる、整った崇の顔。今は、ドキドキのカケラもない。
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