第一章 プレゼント

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アタシと奈々は、店から徒歩5分もかからない、よく利用するファミレスに来ていた。 注文を済ませて、話は結局ピエロの事に。 「それにしても何なんだろうね、これ」 可愛いピンクの鞄に付けられたピエロを難しい顔で見つめながら言う奈々。 アタシもお気に入りの鞄で無駄に存在感を放つピエロを睨む。 「こんなの絶対売れないよね。店のイメージキャラにしても可愛くないし」 「だよね。だいたいなんで仮面みたいなのしてるんだろ?」 え?となって奈々のピエロを見ると、アタシの鞄についてるピエロと少し違うようだ。 ちょっと見せてと腕を伸ばして、奈々のピエロを手にとってよく見た。 そのピエロは、アフロな髪型も服も同じ。でも顔が違った。 顔って言うか・・・これは、確かに仮面、だ。 アタシのピエロが、普通の真っ白の布に目や鼻が縫い付けられてるのに対して、 奈々のピエロはアフロと白い顔の間に肌色の生地がある。 その白い顔も、肌色の生地より膨らみがあって、目の部分には窪み。その奥に覗く肌色と目玉替わりのビーズ。 鼻はその白い仮面にあと付けって感じだ。 なんだかちょっと凝ってある。 って事は、他にも種類があるのだろうか? 「・・・そんなレパートリーいらねーよ」 思わず呟くアタシ。 すると、アタシのピエロをじーっと見ていた奈々が、ぽそりと零す。 「そっちのが可愛いなぁ・・・」 ・・・可愛いか? まぁ確かに仮面のピエロに比べればマシかもしれないけど、可愛いか?? そうは思いつつも、奈々がこっちのがいいと言うならと、アタシはピエロを鞄から外す。
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