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「……三繼期さん、に……終さん……? 一体何が……」
三繼期の顔色が一気に悪くなっていく。今の今まで、紅潮させていたのに。終は何事もなかったかのように埃を払い、立ち上がると三繼期に背を向けたまま言い残す。
「……確かにあの時、俺は『忘れなくてもいい』と言った。だがそれはお前が気持ちを抑制出来ていることが前提だ。俺は医務室へ行く。別に大したことはないが……羅維納、三繼期を一人にさせてやれ。行くぞ」
「えッ……あの……?」
それから入口の扉が閉まるまで、羅維納の手を引き共に中庭を出て行く終が振り返ることは、一度もなかった。
生温い風がそっと頬を撫でる。立ち眩みを覚えた三繼期の膝は芝生に崩れ落ち、頭の中へ無数の渦巻きが入り込む嫌な感覚に支配された。
もう何が何だか分からない。何が良くて何が悪いのか、どうすればいいのか、どうしていいのかも分からない。考えたくない。
死神は常に非情であり、色恋沙汰が言語道断ならば。何故――こんな感情を持ってしまう様に生み出されたのだろうか?
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