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感情など入力する隙間もないくらいに緻密で、機械仕掛けの人形が如く。ただ仕事をこなすだけのロボットを作った方が合理的だ。繊細な感情を持つ人形(ヒトガタ)で生み出しても、自分のように葛藤を抱えてしまうだけなのだから。
どうしてこんな風に生まれてしまったのか。
終の口から出た『あの時』という言葉。そう、あの日も自分は、羅維納とさも当たり前のように親密になっている終への嫉妬を爆発させてしまった。
関わるな、なんて暴論を言いたい訳じゃない。三繼期が一番気に入らなかったこと。それは――
『自分が欲しかったモノを無意識の内に手にしながら、その自覚や実感を全く持っていない』こと。
謎めいた雰囲気や御伽話(おとぎばなし)に出て来そうな綺麗な外見、世間を達観したような冷静で重みのある発言力。それら全てが羅維納のみならず、様々な人の関心を奪っていく。
羅維納と二人で過ごす時間。
羅維納から委ねられた信頼。
かつて同じ世に生きる人間だったという、限りなく希少な共通点。
負った深い傷の数々。
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