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寂(さび)れた床屋に、山田は決意して入った。中では50代くらいのオヤジが漫画を読んでいる。
山田は、オヤジに言った。
「尾崎カットにしてください」
その言葉に戸惑いを見せたが、オヤジは理解して答えた。
「ああ、ジャンボね」
「違います、尾崎豊です」
後ろ髪だけ長くしない。
山田は携帯電話に保存している画像を見せる。
その画像は、尾崎豊が黒いタートルネックを着て頬杖をついてるものだ。彼が一番気に入ってるショットだ。
老眼のオヤジは画面の前で顔を前後させて言った。
「ああ、こりゃ無理だな」
「何で?」
オヤジは山田のまじまじと見て、笑う。
「だって、顔が全然違うもん」
「顔、関係ねぇーだろ!」
床屋のオヤジなんて、くそ食らえと思った。この髪型からの“卒業”
鏡の中の自分がこちらに呟く。
「ショータイムだ」
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