ジャンボ

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 池元は芸人には向いていない。こういうタイプは一歩踏み間違えてしまうタイプだ。引き際を知らない。  だが、俺なら教えてやれる! 「ショータイムだ」  山田は何か決意した時に、このセリフを呟く。  タイムリミットは10分間。そう、ショータイムは、休み時間だけだ。  山田は池元に近づく、何か本を読んでいた。 「何だよ、山田」  相手の先制パンチに一瞬、驚いたが、軽いジャブを返した。 「何の本読んでんだ?」 「伊坂幸太郎」  作者の名前を言った。山田はお決まりのボケをかます。 「ああ、松たか子の親父か」 「それは松本幸四郎だ!」  早い、的確な突っ込みだ。あざとくないとこがいい。  山田は『一緒に芸人にならないか?』という言葉を発しようとした。 「一緒に……げっ」
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