ジャンボ

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 緊張で一緒に胃液を吐き出しそうになる。《芸人》が言えず、《ゲゲゲの芸人》になりそうだ。 「何?」 「お前の一番好きな本、何なの?」  普段、話しかけたことない俺に対して不思議そうな顔をしながらも、少し間をおいて答えた。 「羅生門かな」 「ああ、藤子・F・不二雄か」 「そりゃ、ドラえもんだろ」  的確なツッコミだ! こいつ神か? 才能があるとしか思えない。 「お前さ、面白いから芸人になったらいいんじゃない?」 「いやだ」  その三文字言うと思ったぜ。しかし、まだショーは終わらない。 「何で?」  確かに、こいつは芸人に向いてないと思う。  でも、これだけ面白いんだ、自意識過剰になって芸人になりたいと思うのが普通だ。 「お前には関係ないだろ」 「なれるって! 俺と一緒にゲイにっ!……」  あ、舌噛んだ。 「なるか!」  持ってた本の角で山田の頭を叩いた。  幕は閉じられ、客席から拍手が聞こる。ショーは終わった。
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