真っ暗な世界

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真っ暗な夜道を自転車で走ってると、真っ暗な世界に迷い込んだ。 いや、正確には迷ったと分かるのは後のことで、その時はそんな気がした。 俺はよく不思議体験をするタイプの人間で、撮った写真が心霊写真だったり、UFOが写ってたりと、いろいろあった。 「とうとう、世界が狂ったか…」 まあ、そうゆうこともあって驚いて取り乱すことは無く、いたって冷静だった。 「さて、どうやって帰っかなぁ…」 そう呟いて、取り敢えず、家に帰る方へ自転車を漕ぎ出した。 しかし、幾ら漕いでも帰れない。そればかりか、周りの風景も変わらない。 「疲れた…」 流石に、少し焦りだした。 「ヤバいなぁ…帰りてぇなぁ…」 そんな時、家族の顔が浮かんだ。 間違っていた俺を正そうと俺を殴って、それ以来口をきいてなかった、親父。 「謝りてぇよ…親父…」 夢も無く生きていた俺に教師とゆう夢を与えてくれた、お袋。 「まだ、"ありがとう"言えてねぇよ…」 ウザったいけど、悩みを打ち明け、打ち明けられた、妹。 「まだ、彼氏の事、紹介してもらってないだろ…」 不覚にも目から涙が零れた。 「帰りてぇよ…うぅっ…」 絶望に打ち拉がれ、座り込んで泣いていた、俺の耳に携帯の着信音が鳴り響いた。 「もしっ…もし…?」 しゃっくりで言葉が上手く出ない。 『お前っ!!そこで、何してるんだ!!』 「ふぇ…」 急な人の怒声に驚いて間抜けな声が出た。 『だから、何をしているんだって!!』 俺は直感した。この人は確実に俺を助けてくれる人だと。 「迷ったんです!!助けて!!」 『迷ったんです!!助けて!!』 「え!?」 電話越しに俺が言った言葉と寸分狂わない声が聞こえた。 「迷ったか…俺が近くにいて、ラッキーだったな。」 後ろから声が聞こえ、振り向くと、携帯電話を手に笑ってる50代くらいのオッサンが立っていた。
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