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その日から僕らの距離は急速に縮まった。
とは言え、僕は相変わらずヘッドホンを装着して一人で行動したし、空は周りから浮いたまま、時折授業を抜け出すのだった。
大きな変化は放課後。
放課後の屋上で僕らは2人ですごす。
空は翼を惜しげもなく広げ、僕はその横でぼーっと体育座り。
たまに一言二言の会話をし、笑いあう。
それが何より大切な時間だったし、空にとってもきっとそうなんだろう。
ある日、突然空はたずねた。
「ねえ、サキはどうしてヘッドホンをつけているの?」
「ん?これ?」
僕は首にかけたヘッドホンを指さす。
そう、と言うように空はうなずいた。
「金髪に似合っていて、とても素敵」
「ありがとう」
「ちょっと、答えてよ」
「はいはい」
苦笑し、あの日を思い返す。
未だに臆病なままの僕。
「昔話をしよう」
忘れたくても忘れられない。
どうして話す気になったのだろう……
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