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素直に反省をする姫には好感を持つゼロスだが、こう何度もくりかえすのはいかがなものかと考えている。
同じ年頃でも精神年齢に差があると、まるで兄のような心境になる。いや、一周まわって親になった気分だとも思う。
「民の声に敏感なのは良いことです。しかしあなたの立場上、こちらも軽々と外出を許せません。」
この国に置ける王族は重要な役割を担っている。
王族の血を継ぐ姫君、ヴィクトワールもまた、国の柱となる。
魔力の結晶である王族の力は国の宝。
魔術無しでは国は機能しない。
だが幼い彼女の魔力は、巨大でありながらいまだ不安定だ。
心の安寧をはかりつつ、魔力の制御を訓練させる教師が、王族には必要だった。
その教師役がこの男ゼロスだ。
「本当のとこ、何者なのかしら」
後悔から回復したのか、思い出したようにぽつりと問いを口にする姫。
「やつは姫様の名を名乗っているわけでもない。それなのに噂が広まったのは何故でしょう…」
つられてゼロスも考えを口に任せて話す。
「なりすましでなくば、そっくりさんかもね?」
「そんなまさか…」
ゼロスは苦笑いを浮かべた。
そのあいだしばらくふたりでしゃべりあっていたが、すぐに楽しい時間は過ぎてしまった。
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