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ふりかえると優しい目をした老婆が静かに少女をみつめていた。
「いつからそこにいたのです?」
老婆は首をかしげる。
「すこし前からですよ。気づかなかったのね」
あ、と息をのみ赤面する少女。
風が吹いていたとはいえ、背後の気配に気づかぬとは剣士としてどうなのかと。
彼女はたいへん真面目だった。
「お前が悪いわけではありませんよ」
そんな少女の心情を察して老婆は彼女に語りかけた。
加えて失態を責めるつもりではないことも告げた。
「しかし…」
言い澱む少女に、
「私が良いと言うからよいのですよ。分かりましたか?」
老婆が笑顔で一喝。
それは怒りではなく、子に対する慈愛に満ちていた。
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