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と、そこで。
目の前、ほんの十メートルくらい離れたところに仁王立ちする人影があった。
真っ赤な夕日がバックにあり、自ら光を発しない人間の身体は、影のように真っ黒く塗り潰されていた。
「アンタさぁ」
高く透き通った女性の声だった。
女性というより、アイドルの姿を見て、キャーキャー歓喜の声をあげるのが似合う、少女の声だった。
探りを入れるような声に、識上は足を止め、耳を貸した。
「面白そうな力だからさぁ。アタシとやらない?」
けして色気のある声ではない。
挑発の色の声に、ドキリと識上の心臓がはねる。
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