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暮守という人間は、どうやらその時から変わっていないらしい。その性格を、今回も上手く利用されたようだ。
「その暮守という男は、それ程強い人間だったのか?」
「アイツは、強いなんてもんじゃなかったッス!!」
大祐の問いかけに、叫ぶように錦は言う。
「普段は、その、狗鳴さんみたいな感じなんスよ。体格は良いんですけど、大人しい感じっつーか。あ、なんかスンマセン」
「構わない、続けて」
大祐が促すと、錦は頷く。
「ただ、キレてる時はホント、化け物なんスよ。力は勿論すげー強いってのもあるんスけど、何ていうか……。
アイツは、周囲に対して怖いぐらい敏感なんスよ」
どこか曖昧な言い方だったので、アタシもどう受け取るべきか悩んだ。
彼も表現に困っているようだ。
「そうッスね……。例えば、絶対気付かれないように後ろから近付いてぶん殴ろうとしても、アイツには無理ッス。
気付くんスよ、絶対。頭の後ろとか、背中とかに目があるんじゃないかってぐらい、アイツには死角がないんスよ。
どこからどうやって狙っても、必ず反応が出来ちゃう。それがどんだけ怖いか分かります?
アイツには、隙ってものがないんスよ。どんなに狙ったとしても、何人で襲いかかっても、隙がない。
だから、アイツには攻撃が出来ないんスよ。しかも、的確にこっちの隙は狙って反撃してくる。
アイツが本気になれば、銃弾だって避けられる。そんな風にも思っちまう程ッス」
錦は本気で、その暮守という男に恐怖を感じているようだった。
アイツは有り得ない、と目が訴えている。
「あの時はガキだったってのがあるけど、もしアイツがあのまま鍛えたりしてたら、今はもっと化け物ですよ。
こう言っちゃ失礼かもしれないッスけど、狗鳴さんの速さで、五分五分だと思うッス」
大祐で互角というだけで、よっぽどの人間なのだろうということは伝わってくる。
しかも、それはあくまで楽観的な予測でしかないのだ。
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