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完全に手を離すタイミングを外してしまった。
隣を見れば小羽がどうしたのかと不思議そうにしながらも腕を引かれていることが恥ずかしいのか頬を朱に染めている。
「あ、あのっ、壱琉くん…!」
「ん?」
「そ、そのっ……」
言いたいことは分かる、恐らくは俺が現在進行形で悩んでいるこの状況のことなのだろう。
「あぁ……悪かったな」
「うっ、ううん、大丈夫だよ」
離さなければと思っているのに小羽の真っ赤になった顔を見るともう少しこのままでも良いかなと思う俺が居る。
矛盾しすぎだろ……。
そんなことを思いながら手を離そうとした時、また煩い奴が現れた。
「壱琉様ー!」
「出た…………」
「出たって…深森先輩のこと?」
小羽の質問に俺は無言で頷き肯定する。
あの先輩、苦手なんだよな……。
「おはようございます壱琉様、今日も素晴らしく美しいですわ」
「…………元気ですね、先輩」
「壱琉様に朝から会えて元気が出ない筈がありま………あら、天宮さんも居らしたの?」
「えっ?あ、はい、おはようございます深森先輩」
「相変わらず壱琉様の隣を図々しく歩いているのね…」
と、小羽を軽く睨み敵意剥き出しな先輩は深森 花音【みもり かのん】
よく耳にする程の有名財閥のお嬢様で俺達の学校の生徒会長でもある。
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