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有栖が住む所は、瓦屋根が多いそのせいもあってか、洋風な家がならぶこ場所は自分が住んでいる町ではなく、何処か知らない場所に思えた。
「何だここ?」
有栖は、風変わりな店を見つけた。
その店はあの洋風な家が立ち並ぶ住宅街から外れた場所に立っている。
とても古い作りで歴史を感じる、悪く言えば寂れている。
中に古びた洋人形が座っているのが見える。
青いドレスの様な服に身を包んだ少女の人形。
有栖は、その人形に吸い寄せられる様に店に入った。
ギギッ。
木の扉が音を立てた。
店の中は外見のと同じで古い。
あの人形のほかに、アクセサリーのような物が幾つか置いてある。
有栖はその一つを手に取った。
それは、鍵の形をしていた。
キィ。
扉が開く音がしたので、とっさに扉の方を見た。
しかし、誰も入って来た様子はない。
「いらっしゃい」
急に後ろから声をかけられた有栖は、びっくりしてアクセサリーを落としそうになった。
慌てて振り返ると、白髭を生やしたおじいさんがニコニコしながらこっちを見ている。
「すみません、見てるだけです」
「ははは、いいよ。じっくり見ててくれ」
有栖はお辞儀をして、再び手の中のアクセサリーに目を落とした。
「気に入ったのかね?」
「……」
有栖はアクセサリーを見ながら、頷いた。
「そのアクセサリーはな……」
静かに語りだすおじいさんの方を見た。
「そのアクセサリーの鍵は、人の心に入れる魔法の鍵なんだよ」
おじいさんは真っ直ぐな目で言った。
「人の心に……」
信じている訳はでない。
ただ何故か山宮の顔が頭に浮かんだ。
「気になるのかな?」
「少し……」
「そうか、じゃあこれはどうだろうか?」
おじいさんが何かを取り出した。
有栖はそちらを見る。
小さな扉があった。
キィ。
あの扉が開く音がした。
そして、目の前の小さな扉が開いた。
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