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『トイレの花子さん』。
その怪談は地方によって多少の違いはあるものの、知らない人はいないだろう。
大筋は大体こうである。
学校の三階の三番目のトイレには、花子さんという霊がいる。
順番に三回ずつノックをし、最後の個室をノックし終わった後、「花子さんいらっしゃいますか」と唱える。
すると、三番目の個室から「はい」と女の子の声で返事が返ってくる。
そこで扉を開けてしまうと、おかっぱ頭で赤いスカートの女の子にトイレに引き摺りこまれてしまう、というものだ。
今回の事件で発見された女児の状況が、怪談の『トイレの花子さん』と合致している。
だが、それが指し示すのは……!
「それはつまり……その子を殺したのはお前じゃないのか……!?」
心臓の鼓動が早くなる。
それは仕方ないだろう。
もしかしたら、目の前にいる少女は殺人事件の加害者であるかもしれないのだから。
「君がそう思うのも、もっともだね。だけど僕じゃない。君に自白する意味がないだろう? それにね、“僕達”は人間が死ぬと困るんだよ」
なぜなら、人が消え、噂をする者がいなくなったら“僕達”は死んでしまうんだから。
締めくくりにそう言って、花子は口を閉じた。
実際のところ、信じるも信じないも関係ない。なにせ相手は怪談、人ならざる者だ。俺のことなど、その気になればどうとでもなる。
心臓はまだ早鐘を打っていたが、俺は大人しく話を聞くことにした。
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