136人が本棚に入れています
本棚に追加
「さてと、どこまで話したかな……。ああ、そうだ、その事件なんだけどね、すでにネットではちらほら噂になっているようなんだ」
何事も無かったように花子は話を再開した。
「まあ、人の口に戸は立てられないってことだね。ニュースでは悲惨すぎて伝えられていないが、おそらく関係者が漏らしてしまったんだろう」
「で、ネットではどんな噂が流れてるんだ?」
そこで花子は、待っていましたとばかりに、にやりと笑った。
「ネットでもね、君のように僕の仕業ではないかと疑っている輩がいるんだ。もちろん僕の存在は知らないだろうけれど。
だけど、そこは重要ではない。さらに面白い尾ひれがついた噂が流れてるのさ」
殺人事件を面白可笑しく噂にしている連中がいると思うと胸糞悪い。それを率直に面白いと表現した花子もどうかと思うが。
俺が複雑な心境で押し黙っていると、花子はそのまま話を続けた。
「その噂は簡単に言うとこうだ。
昭和の大怪談『トイレの花子さん』。しかし現在では、その恐怖は忘れ去られてしまっている。
花子さんはそれが面白くなかった。だから仲間を作ろうとした。新たな『トイレの花子さん』をね。
そうすることで再び人間達に恐怖を与えるために。その犠牲者が今回の哀れな少女。
それがネットで流れてる噂さ」
そして花子はふふっ、と可笑しそうに笑った。
「全く笑ってしまうよ。僕は恐怖を与えようなんて思ったことはないのにね。
僕は語られるだけで存在できる。漫画やゲームじゃないんだから、恐怖を糧にする必要なんか無いのさ」
最初のコメントを投稿しよう!