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「りょうせんせいだー」
その“りょうせんせい”と呼ばれた男の人が来るなり、さっきまで俺のところへいた女の子たちが彼の元へ走っていく。
「遊んでもらってたの?」
「ううん、まだー」
「そっかぁ、じゃあ残念だけど、そろそろお帰りのお時間だからお仕度してね?」
「はーい」
「ほら、みんなも、ね?」
「‥わかったー」
俺を囲んでいた子たちも彼に促され皆一斉に室内へと入っていく。
どうやら俺の姿を見るなり状況を察してくれたらしい。
「すみません、ご迷惑をお掛けしました」
子供たちが全員中へ入ったのを確認すると、“りょうせんせい”は俺のもとへ来てぺこりと頭を下げた。
「い、いえ、そんな気にしてませんから‥」
俺がそう言うなり、安堵したようにふわりと彼が笑う。
そのあまりの品の良さに男相手とはいえなぜか胸が高鳴った。
(見た目からすると同い年ぐらいだろうか‥。)
(俺とは大違いだな‥。)
「お迎えですか?」
「えっ?あ、はい!」
突然の問いにテンパっている俺を見て、ふふ、と彼が笑う。
「熊田正義、なんですけど」
「お兄さんですか?」
「いえ、従兄弟なんです」
俺がそういうと納得したような顔を見せて
「じゃあお連れしますね、」
と淡いピンクのエプロンをなびかせながら教室へ走っていった。
‥なんか、すごく素敵な人だ
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