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「正義くん、お迎えが来たよー」
彼が教室に向かって呼びかけると、ひょっこり正義が顔を出した。
準備万端らしい。
しかし俺の姿を見た途端、あからさまに嫌そうな顔をする。
居候して二週間ほど経つが、いまだに俺はあいつの笑った顔を見たことがない。
しかも俺の前に来るなり、
「‥なんでおまえが‥」
なんて悪態をついてきやがった。
それとは対照的に“りょうせんせい”は柔らかい笑みを絶やさない。
‥俺だって好きで来てるんじゃねぇよ‥
「それじゃあ正義くん、さようなら」
「じゃあな、なるせ」
丁寧な挨拶をする彼に対して、なんとも生意気な返事をする正義。
なんてやつだ‥。
そんなふうに思っていると
「芹沢さんも、さようなら」
と、彼から挨拶をされた。
「え、なんで俺の名前知ってるんですか‥?!」
なんて驚いて思わず聞き返すと、
「正義くんから教えてもらっちゃいました」
といたずらっ子のような笑顔を見せた。
その笑った顔に思わずどきりとしてしまう。
なんだか嬉しくて、門をぐぐるときにおもわず手を振れば彼も快く手を振り返してくれた。
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