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四月の新緑の中を軽自動
車が走っていく。
『もうすぐ着くよ』
「うん」
助手席で車窓の景色を飽
きずに眺めていると、運
転している紅(こう)ちゃ
んが言った。
『新しい家ってどんなと
ころ?』
「着いてからのお楽しみ
。ランもきっと喜ぶよ」
俺の膝で眠っていたラン
は名前を呼ばれて紅ちゃ
んを見上げた。
『大丈夫だよ。俺たちは
捨てたりしないから』
理解出来ているかはわか
らないけど、ランを安心
させるため頭を撫でた。
ランは三ヶ月前に家族に
加わったトイプードルだ
。
仕事帰りに捨てられてた
ランを紅ちゃんが拾って
きた。
その日は天候も悪く外は
土砂降りの大雨で、まる
で春の嵐が来たような日
だった。
ランは嵐の日に家にやっ
てきたから嵐→ランとい
うわけ。
「やっぱり、アラシがよ
かった」
『女の子なんだから、ラ
ンでいいじゃん。それに
名前は公平に決めただろ
?』
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