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これはもしかしたら――、学生たちがそんな期待を抱き少年を覗き見ようとした、その時だった。
「残念ー。主の力をたかだか科学の能力ごときで抑えられると思った?」
犯人の女の言った言葉を理解出来た者は、冬夜を含めその場にはいなかった。
ただ皆の目に映ったのは、降り注ぐ業火と、倒れゆく少年の姿だった。
バタン! バタン! と次々に他のテーブルの下から音がなる。
恐怖と緊張に耐えかねて体が意識を手放したのだろう。無理もない、と冬夜は女の手を見ながら思った。
女が扱ったのは間違いなく能力ではない。
あれほどの力を持つ能力者なら冬夜の耳にも入っているはずだ。
何より――あれが能力ではないという確信的な証拠があった。
「(白瀬くん!? いったい何を――)」
風祭が止めようとするのを無視して冬夜はテーブルの下から這い出た。
そして真っ直ぐ女の方を見て、言う。
「ちっ。魔術師かよ……世界単位で迷子にでもなっちゃったのか」
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