水色の街

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そんな不思議な彼女と、生活が始まった 不思議と彼女と居ると、気持ちが落ち着いた そして、二回目の台風が過ぎた頃、私は音楽も写真も見なくなっていた 「台風過ぎましたね」 「お買い物行くか」 「うん!!」 彼女の一緒に街まで出かけるため、バス停でバスを待っていた 私の手を離れ、水たまりの真ん中で水を蹴り飛ばして遊んでいた彼女 少女趣味は無いけど、これから先も、彼女の傍で居たい… この短い期間で、そう考えていた 「そうだ、深雪」 「はい」 「これ、あげる」 私がポケットから出したのは、彼女がいつも使っていた、ピンクのリップの替えだった 「リップですか??」 「あげる」 「大事に使うですよ!!ありがとです!!」 嬉しそうにワンピースのポッケに入れ、再び水たまりで遊ぶ 「あ、バス来たですよ!!」 私達はそれに乗った 私の隣で、彼女は無邪気に外を見ていた 「ふん、ふ~んふん」 彼女が口ずさんでいるのは、あの日聴いた、水色の街だ 「深雪、着いたら喫茶店でも行こうか」 「アイスティーが良いです」 「分かった分かった」 バスを降りると、目の前の喫茶店に入った 「深雪はアイスティー」 「じゃあ、アイスティー一つとアイスコーヒー一つ。それと、アイスクリームを2つ」 「変わらないですね、注文」 「ふっ…」 彼女は、私の全ての癖を知っていた 何から何まで、全部 それはまるで、あいつの様だった それから買い物を済まし、デパートを出ようとした時だった 「あ、雨降ってきたです」 「ほら」 「あ、ぴよちゃんの傘!!」 降ると予測して持って来て良かった 再びバスに乗って、田舎に戻った バスを降りると、彼女が手を振った 「楽しかったです」 「また行こうな」 「…」 繋いでいた手を解き、そこに立ち止まる彼女 「どうした??」 「健司…健司に大事な事を言わんといかんですよ」 「どうした??」 「深雪は…もう死んでるんです…」 私はそんな彼女を見て、こう言った 「知ってるよ…“美冬”」 「わ、分かってたですか!?」 「とっくに」 「健司、美冬…こんな姿ですけど、健司の傍に居ても良いですか??」 「一緒に帰ろう。“僕達の家へ”」 「…うんっ!!」 走って近づく彼女を抱き締め、家へ帰る道を辿った 健司の家では、今度は明るく“水色の街”が流れていた…
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