エピソード1 『出会い』

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エピソード1 『出会い』

 僕が彼女に出会ったのは、五年前の春、高校を卒業し、一年の浪人生活を経て、前期入試で大学合格という名の栄冠を手にし、悠々自適に残りの春休みを満喫していた頃だった。  (しかし、一年勉強だけの生活を送ってただけで、ここまでたくさんの商品が発売されてしまうとは・・・。お金が持たないなぁ~。でも、やっと浸れる!君たちに会えるよ!!)博幸【ヒロユキ】はアニメショップでそんなことを考え、にやけながら商品を選んでいた。はたから見たら確実にキモい。そして引くだろう。そんな感じでまわりの人間などお構いなしでひたすら商品選びに尽力していた。 博幸自身そのことを、自分がこういう属性であることを、ヲタクであることをよくは思っていなかった。後ろめたさや自己嫌悪を感じながらもハマってしまっていた。まぁ、博幸の場合、もともとは活発なので、『ヲタク』という言葉には少々語弊があるかもしれないが、博幸は一般にいう『ヲタク』で間違いなかった。実際、高校時代はその特性を理解されず、いじめの対象にされたりもした。それでも、そんな中でも、むしろそんな状態だったからこそ、本気でハマっていた。『現実逃避』その方法の一つとして博幸はこれを選択していた。そう、だからおよそ青春らしいことを何一つ高校時代にはしていなかった。『恋愛』『遊び』『友情』・・・。 だから博幸は決めていた。大学では青春を謳歌すると!!! そのためヲタク属性を封印しようと思っていたのだが・・・・うまくはいかなかった。だから、今日もアニメショップへと足を運んでいるのだった。 「―――もし?もしも~し?」 「へっ!はっ、はい?」 急に話しかけられたので、博幸は体がビクンとなり、変な声をあげてしまった。 「ちょっとそこどいてもらってもいいですか?あなたが、そこで商品の前に突っ立ってるおかげで、私そっちに行けないんですけど・・・」 明らかに不機嫌な様子で女性が言った。 「あっ、すっ、すみません」
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