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なんであの時、あんなこと思ってしまったんだろう。
普通の幸せ、だなんて。
無理にでも止めたら良かった。
きっと相武さんもそれを望んでたはずなのに。
どうして君の手を掴み奪えなかったんだろう。
どんなに時が流れても、君をずっと…
「っ、シノ!」
「相武、さん…」
真っ白な衣装に身を包んだあなたはとても綺麗で。
あのまま一緒に居たら俺と着てくれてたかな?
「来て、くれたんだ」
「だってあなたの晴れの日だし」
「ありがとう…」
ねえ、そんな寂しそうな顔しないでよ。
泣きそうな顔、しないでよ。
今日という日を、ぶち壊したくなるから。
今すぐ2人で逃げたいなんて、思っちゃうから。
たとえそれを俺もあんたも願っていたとしても。叶わないから。
お互い無理な笑顔を作ってるなんて悲しすぎるじゃない。
「ねえ、シノ…」
「奥さん、幸せにしてやんなよ?」
その黒目がちな瞳に浮かぶその涙は見ないふり。
だからあんたも、俺の涙は見ないふりしてよ。
格好悪いとこなんて見せらんないから。
それに、お互いの涙はもう拭えないんだ。
「相武さんの幸せをずっと願ってるから」
「ありが…っと」
例えそれが、どんなに寂しくて辛くても。
─END
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