後ろの君

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「それでさー」 「うん」 学校からの帰りのバス。 部活が一緒で、方向が一緒なこいつとのいつもの帰り。 若干声を張り気味に喋る相武くん。 端から見れば変な光景だろう。 だって俺と君の席は隣ではないから。 「そん時のしゅうちゃんったら、ちょー面白かったんだよ!」 「ははっ、想像できるな」 「でしょー?」 一つ後ろの席に座る相武くんは、前の座席の背もたれに手を掛け少し前のめり。 俺も話易いように、体を横に向けてる。 周りの人からしたらおかしいだろうけど、俺にとってこの距離感は大事なんだ。 いつからだっけ。 こうやって前後に座るようになったのは。 相武くんを意識しだしたのは。 意識すればするほど、隣に居るだけなのにどうしようもなく熱くなった。 だから部活用のでかいバッグを足元に置くと邪魔だから、なんて理不尽な理由を付けて席を離したんだ。 「お、着いた」 「こっから歩くのがだる」 「すぐじゃんか!」 バスから降りてわざと相武くん側にバッグを持つ。 少しでも距離を保ってないと、どうにかなりそうで…。 「ねぇ、たけじゅーん」 「ん?」 「たまには隣座っていい?」 思ってもみない問いかけに一瞬止まりそうになったけど、なんとか返事をする。 「は?なんで」 「だってあれだと俺疲れるんだもん」 「じゃあ話しかけんな」 嘘。もっと相武くんのこと話してよ。 いろんな顔見せて、声を聞かせてよ。 「そんなこと言うなよー」 「うそうそ。まあ、気が向いたらな」 「いつ気が向くんだよっ」 「止めろバカ!」 いつもの笑顔で髪をわしゃわしゃと乱暴に撫でられるも、口とは裏腹に笑顔が零れる。 今はこれでいい。 俺にとって、この距離ご心地良いから。 ーEND .
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