近くて遠い

5/10

31人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
しばらくグダグダ呑んでたら、携帯が鳴った。 竹准だけに設定してる着信音で。 「あ…」 出なきゃ。 そう思って携帯を取ろうとしたらシノに奪われた。 「返してよ」 「嫌だ」 「返して!」 「電話に出たら…、あんた行くだろ?」 「呼び出しだったら行くよ」 「行くな。…っ行くなよ!」 びっくりした。 シノがこんなに声を荒げることってないんだもん。 いつも自分の感情を表に出さない分、なんだか心が痛んだ。 そのうち着信音は止まり、不在着信を告げる光だけが残る。 「シノ…」 「なんで准くんなんだよ…、なんで相手がいる奴なんだよっ。あんたは!それで幸せなの…?」 静かにそう呟いて、手に持っていた携帯を力なく落した。 「…幸せ、だよ?」 「じゃあ…、じゃあなんでそんな悲しそうな目してんだよ…っ、泣きそうな顔してんだよ!」 「……っ、でも!」 「でもじゃねぇ!」 図星だった…。 今の関係で幸せだなんて思ったことはない。 .
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加