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関係はいたってフラットだ。なんでも話せるしね。
付き合いは長いけど、これといって何も変わらない。
それが俺と相武さんの関係。
もう何年になるんだろうか。こいつの親友というポジションを演じているのは。
距離感はいいんだけど、本音を言えばツラい。
「ちょっと!シノ聞いてよー!」
「今度はどうしたの」
いつものことだと呆れ気味に聞けば、そんなのお構いなしに怒りマックスの相武さんが鼻息荒く話始める。
「あいつってばさ、約束忘れてたって。信じらんねえだろ!」
こっちは楽しみにしてたのに…、と今度は今にも泣き出しそうな顔で俯いてしまった。
この人の表情をこんなに変えられるあいつが羨ましい。
怒ったり悲しんだり、そんな顔俺じゃ無理だ。
「忙しいんだし仕方ないんじゃない?」
「でも何回もだよ?流石の俺も頭にくるっつーの!」
まあそうだよな。一度や二度じゃないんだから。
それが嫌なら別れればいいのに、それをしない相武さんは不思議だ。
「だからさ、俺にしなって。あんたのこと悲しませないよ?」
「ぶっ!シノ本気?ちょー嬉しい!」
ケラケラ笑いながら棒読みで嬉しいと言うバカがどこにいるってんだ。
あ、ここにいたか。
肩に腕を回して、マジっぽいムードを作っても茶化されて終わってしまう。
あんたの前じゃいつだってカッコつかないまま。
これじゃいつまで経ったって本音を打ち明けられやしない。
今が見えるファインダーがあったなら、こんなに近くにいるのにあんたはずっとずっと遠くに見えるんだろう。
あいつと幸せそうに笑う背中かもね。
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