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「なあ…、話したいことがあんだけど」
いつもと違う雰囲気に、嫌な予感がしてたまらない。
あんたのマジな顔なんてらしくない。
そういうときってろくなこと起きないんだから。
そう直感的に思って、今すぐにでも逃げ出したくなった。
「俺ら、別れよ…」
ほら、予感的中。
こういう時に限って感てもんは当たるんだ。
てかいきなり何言ってんの?
冗談きついって。
なに、ドッキリのつもり?
頭の中では色々言葉は浮かぶけど、結局口はパクパク動くだけ。
情けない。
早くいつもみたいに返さなきゃ。相武さんのタチの悪い冗談かもしれないんだから。
早く、早くなんか喋んなきゃ。
「いきなり何、言ってんの…?」
「見合い、させられた…。結婚することになったんだ…」
「は?意味分かんない」
「俺だって分かんない!」
相武さんの悲痛な言葉も、何を言われても頭に入ってこない。
頭ん中真っ白ってこんな感じなんだって、客観的に見てる自分が居た。
でも一つだけ。いやにはっきりと思ったんだ。
あんたには普通の幸せが似合うんだろうなって。
「なあ、かずっ、」
「幸せになって…っ?」
詰まった声が今でも頭に残ってる。
最後に見たあなたの顔は、何かでぼやけて歪んだ顔だった。
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