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「午前0時23分…。死亡確認……。御臨終です……」
医師は静かに沙織の死を告げる。
病室には沙織の両親の泣く声と、俺の悲痛な声が響いた。
俺の頭の中を沙織との思い出が駆け巡る。
幼稚園から今まで一緒の時間を過ごしてきた。
俺にとって掛け替えのない存在だった沙織……。
楽しいときも、辛いときも常に一緒の時間を過ごしてきた沙織の存在は俺の心にとって大きな存在だった。
だが沙織はもういない……。
声を聞きたくても沙織は喋らない。彼女の笑った顔が見たくても彼女はもう笑わない。
俺の心には大きな穴がポッカリと空いてしまった。
俺は立ち上がり、病室を駆け出した。
「ハァ、ハァ…。沙織……」
俺は病院の外へ出ると大声で今はいない沙織の名前を叫んだ。
だが、その叫びも土砂降りの雨の音で掻き消されてしまう。
その雨はまるで俺の心を表しているような……。そんな雨だった……。
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