昼どき

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‥そのまま、その店員の身体をぐるりとひっくり返した。 ひっくり返された店員の雄大な身体は、その場で肉色をした臓物のカタマリとなった。 ひっくり返された店員の雄大な体格の内側に、すべての時間と宇宙の星辰の変転は込められており、店員は自らの内側に視線をあて世界のすべてがそこにあるのを観照した。 世界の外側に立ったふたり連れは、びくびくとうごめく奇怪な臓物の肥溜をながめた。 「先輩、みてくださいよコレ!コレをぼくはきれいにしなきゃいけないんですよ!」 そうして彼は、むぞうさにその臓物をかきわけると、汚物を除去し、石鹸でそこを掃除しはじめた。 やがて、よごれを洗い清められた臓物のカタマリは‥その動力源を失って、しだいに動くのをやめていった。 テラテラとした表面の色つやまでもやがては引き、世界を内包したままの、その臓物のカタマリは停止した。 「どうです?先輩!」 「うぬ、なかなかやるな‥だが《世界》はこれだけではないのだぞ!?」 身ぶりもあらく、年配のほうが手をふると‥そこには無限の広がりが、世界が‥世界が! ‥そのとき、みじかいアラームが鳴った。 「もう、時間だな。そろそろいかないと」 「あ、そうですか。そうですね」 そしてふたりはその店をでた。 昼のにぎわいも終わりにさしかかる時間帯だった。 了  
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