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「なんだ。さいきんのわかいのは肥溜しらんのか、コエダメ」
「いやいやいや。肥溜くらい知ってますけど」
「その肥溜にな、石鹸が一つ浮いていると考えてみろ」
「はあ、石鹸ですか」
「肥溜に石鹸が一つくらいあったからって、なんになる?肥溜のなかの石鹸をだれが問題視するんだ?だいたい、たかが石鹸一個で肥溜をきれいにできるか?」
「それは‥そうですね」
「肥溜は会社だよ。社会だよ。石鹸だろうがなんだろうが、そこに溶け込まないでは何にもできないんだ」
「じゃあ‥溶け込んだらどうなるんです?」
「さあなあ、‥においがいっしょになるんじゃないか?」
「え‥ニオイですか」
ふいに近くの席から客が立ち上がり、つかつかと足音をさせとおりすぎていく。
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