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話そう。
結局そう決断してからしばらくの時間が経ってしまった。
次の日は仕事だ。時刻は午後11時になろうとしていた。
私は翔にアルバムを渡した。翔は最初は何のアルバムかわからず平然とした様子だ。
翔がアルバムを開くとほぼ同時に閉じた。
「それどういう事?」私は翔に問い詰めた。
翔は「元カノ」とだけ応えた。
「日付かぶってるよね?私には会社の同期と沖縄に行ったって言ってたよね」 もはや翔に返す言葉はない。
私は続けた「元カノとはいつまで続いてた?」
翔は「元カノとはずっと遠距離の状態で続いてた。けどあれを付き合ってるのかと言えるのかな、って位自然消滅に近い状態だった。正式に別れたのは一年前位。黙っててごめん。」
私は黙って考えていた。確かに翔の言っている事は本当なんだろう。私が翔とベッタリいるようになってから2年あまり。元カノが遊びにくる事は一度も無かった。あの沖縄旅行は2人の最後の旅行だったんだ。
だけどその間、私に嘘をついた事に変わりはないし、何度か東京で会っていて抱いたりもした事位は間違いなく事実である。
私が出した答え。
「別れよう」
小さく告げた。
泣かないように小さくでも震えた声で。
翔は元カノとのアルバムをゴミ袋に入れた。明日はゴミの日だ。
翔との別れを決意し荷物は来週中には取りにきて片付けると告げた。
そして、溜まった洗濯物をいつものように畳んだ。
翔が顔を伏せた。
翔が泣いてる。
翔の泣き顔は初めて見た。泣きたいのは私だ。
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