想紫苑

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私は一層、声の調子を下げて返答していた。 「……サギだったら電話を切るぞ」 「それはないだろ?早く来いよ」 この電話にかけてくる相手など一人しかいない。 男は場所を告げると、一方的に電話を切った。 通話時間を記録した画面が、虚しく表示される。 ため息すら無駄に思えて、私はそのまま携帯電話を閉じた。 机に置かれたままの拳銃を、何のためらいもなく掴むと、鞄にしまう。 重い腰を上げ、上着を羽織って戸を開ける。
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