想紫苑

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外は、清々しい程の青空。 暖かな風が頬を撫でるが、まだ少し肌寒さが残っている。 東京は、すでに桜の蕾が綻び始めていたというのに、こんなにも違いがあるのだろうか。 15分ほど歩いて、私は小さな神社に着いた。 本当に神が祭られているのかと疑いたくなるほど寂れて、人の気配などない。 本堂の近くに置かれた、横たわる牛の石造に背を預けるように男がいた。 周りに投げられたさい銭の上に、我が物顔で腰を下ろしている。
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