想紫苑

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「ただ、君はどうすれば納得するんだい?」 「それがわからないから困っているんだ。だから、お前に手伝ってもらおうと思ってな。一人よりも、二人で考えた方が効率がいい」 「人の心理なんて、考えたってわかるものではないと思うのだけれど…」 「それなら、それでいい」 それなら、俺の人生はその程度って事だ。と言っているように聞こえて、私は少しだけ驚いた。 昔の、私の知ってる高校時代の彼は、こんな悲観的な考えをする人間だっただろうか。 「いいか、一ついい事を教えてやる。人を生きるから人生って言うんだ。死のうとする奴は人じゃなくなる」 サギは私の考えを見越したように、ニヤリと笑った。 そしてそれは、自分が人間であることを否定し、生きることを諦めているように聞こえた。
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