プロローグ

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 経済悪化の一途を辿った日本。 貧富の差はどんどん広がり、都市部には裕福な人が集まり、貧しい人々は都市部から追いやられていった。 スラム街が誕生し物乞いすら珍しいものではなくなっていた。  気付けば廓が再び姿を現し、政府はそれを黙認していた。 だんだんと廓は数を増やし、政府によって一ヶ所に集められていった。 やがて廓が集まった街が誕生し、高い塀で囲まれた。 人々はそこを「吉原」と呼んだ。 吉原には昔と同じように、貧しい家の娘たちが口減らしのために売られてきた。 廓のルールは昔ほど厳しくなく、お客は遊女をひとりにしぼる必要がなくなった。 遊女たちは固定客を得るのが難しくなり、競争が激しくなっていった。  吉原には『王華』とう新しい制度が生まれていた。 昔の遊廓では、廓ごとにあった番付が、現代の吉原では廓ごとだけでなく吉原にある全ての廓で番付が行われた。 その番付のトップが王華であった。 王華は『華の女王』とも呼ばれていた。 王華の入れ替わりは激しく、二期連続ですら難しいと言われていた。  そんな中、伝説として語り継がれている遊女がいた。 最年少で華の女王である王華になり、吉原を去るその日まで王華であり続けた。  その遊女の名は『桔梗』。 吉原にその名を知らない者はいない……。
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