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しんしんと降り続ける雪は気付けば人の背丈を超えるほど積もっていた。
雪の降る音すら聞こえそうな程シンと静まりかえった静かな夜。
街灯も無く、辺りは暗闇で覆われていた。
どこからか車のエンジンの音と舗装されていない道を車が進む音が聞こえてきた。
音が段々と近づいて、やがて車のライトが見えてきた。
山間の貧しい村には似つかわしい高級感の漂う黒い車は一軒の民家の前で止まった。
エンジンが切られると辺りは再び静まりかえり、ライトが消されると暗闇に包まれた。
ひとりの男が車からスルリと出てきた。
吐く息は白く、寒いことが伺われる。
男は一瞬眉をひそめたが、すぐ顔に笑顔を貼り付けると、身なりを整え、迷うことなく民家の呼び鈴を鳴らした。
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