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カラカラと民家の扉が開き、中から男と少女、その後に続くように女性が出てきた。
少女は小さな荷物を抱え、口を真一文に結び男の後を歩いていた。
着ている服は所々ほつれ、継ぎ接ぎもしてあるが、少女の顔立ちは整っており、凛とした潔さがあった。
「ごめん、ごめんね……身体に気を付けてね」
「……いってきます。お母さんも身体に気を付けてください」
母は涙を流しながら、娘に謝った。
少女はは母を許すことも責めることもしなかったが、母から目を逸らすこともなかった。
「そろそろ車の方へ」
「はい……」
男に促され、少女は母から男へ目を向けはっきりと返事をした。
その間も、母は涙を流しながら謝り続けた。
男は車のドアを開け、少女は車へと乗り込んだ。
シンと静まり返った夜に再びエンジン音が鳴り、車はもと来た道を引き返していった。
だんだんとエンジン音は遠ざかり、やがて辺りは静寂と暗闇を取り戻した。
そこには泣き崩れる母だけが取り残されていた…。
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