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車に揺られているうちに夜は明け、気付けば日は高くなっていた。
途中で数回休憩をはさみつつ、車は順調に進んでいた。
少女は窓の外をどんどん流れていく景色を見ていた。
「もう間もなく到着します。到着したら身体を清めていただきます。その後、黒鳴館の主人に会ってもらいます」
「こく……めいかん……」
「これからあなたが暮らすお店です」
「ハイ、分かりました」
外を眺めていた少女は男に目を向けしっかりと頷き、また窓の外へと視線を戻した。
少女のこれまでの様子を見て、男は密かに感心していた。
今まで男が迎えに行った少女たちは皆泣きだし、なかなか親とは離れようとはしなかった。
しかし少女は一粒の涙も見せることはなかった。
その瞳には諦めも絶望も映っておらず、輝きも失われていなかった。
顔立ちも整っており、この少女は花魁になる素質があると男は感じていた。
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