プロローグ

6/10
前へ
/65ページ
次へ
やがて朱く大きな門とどこまででも続いているように感じる塀が見えてきた。 「あれが……」 母親にでも何か聞いていたのだろうか。 少女は朱い門を見て思わずと言うように呟いた。 門を通過してしばらく進むと車は停車した。 男に促され車を降りるとそこには二階建ての背の低い建物が並んでいた。 そんな中、遠くにひとつだけ背の高い建物が見えた。 「こちらへ」 男に声をかけられ、建ち並ぶ様々なお店を見ていた少女はハッとしたように男を振り返り、ハイと頷いた。 呉服屋にかんざし屋、写真館、食べ物屋……様々な店が並んでいる道を男は歩いていく。 少女は店に興味をひかれながらも男と離れないように歩いていく。 しばらく歩くと商店ではなく建物の中が見えるよう格子がついている建物が道の両側にずらりと並んでいる道へと変わった。 車を降りたときに見えた背の高い建物の方へと男が向かっていることに少女は気付いた。 あの大きな建物に連れて行かれるのだろうか……。 どこへ向かっているのか分からない少女は男の背中を見上げながら思った。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

128人が本棚に入れています
本棚に追加