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風呂から出ると用意されていたのは着物で、脱衣所には同じくらいの年の少女がいた。
彼女に着物を着せてもらい、初めて着る着物に少し心躍らせながら風呂場を出た。
風呂場の外で男は待っていたらしい。
カラカラと風呂場の扉が開く音に振り返り、少女が出てきたことを確認すると口を開いた。
「黒鳴館の主人の所に行きます」
「は、い……」
とうとう黒鳴館の主人に会うときがきてしまった。
少女は少し緊張した面もちに変わり、少し言葉に詰まりながらも頷いた。
少女が頷いたのを確認し男は、こちらです、とさらに建物の奥へと進んでいった。
座敷の扉と思わしき前を通り過ぎ、階段を上り、奥へ奥へと歩んでいく。
しばらく歩くと、男はひとつの立派な扉の前で止まった。
今まで見てきたどの扉とも違い、この中に……、そう少女は感じた。
案の定黒鳴館の主人の待つ部屋であったらしく、男は扉をノックした。
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