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「確かに猫目で黒猫っぽいですけど、人間を捨て猫って……! それに彼女は不良な訳でもなんでもないんですから、親だって今更そんなことしませ――」
「……本当だよ。捨てられたよ。私」
あっさりと肯定する私に、返す言葉が見つからないのか、困った顔で私を見下ろす。
「……かはら――先生が“うちに来るか”って言わなかったら、私はきっと、まだあのネオン街にいたよ」
激しさを増していく窓の外の雨に視線を移すと、陸人は一瞬悲しそうに顔を歪ませた。
そして、私のそばに来て頭を撫でて笑うと、手を差し出す。
「そっ、か。なら、これからよろしくね」
差し出された手を凝視して、陸人の顔とその手を交互に見遣り、躊躇いながらも掴んだ。
「……よろしく」
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