少年の別れ

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あの頃、私は寝台特急彗星に常務していたと思う。 新大阪駅の規定発車時刻まであと30秒と無い。 ホームには見送りで来ている人で溢れていた。 そんな中、1組の親子を見つけた。 「また会えるからね」 「元気にしてなさいよ」 ジリリリリリリリ... ホームには発車ベルが響いている。 「また手紙書くね」 「頑張って働いてきなさいね」 規定発車時刻はもう10秒以上過ぎていた。 私は、親子の会話がキリ良く終わったとこで、ドアを閉めた。 そう、この数10秒こそが車掌である私が出来るせめてものプレゼントなのである。 ビィィィィィ 出発合図を機関士に送ると、前方から警笛が聞こえてきた。 ピーーーーーー まもなく列車は動き出す。 「頑張ってね-------」 涙を流しながら手を振っている親。 窓から顔を出し、必死に手を振る少年。 ホームにいた親が列車最後部にいる私の横を流れていったあと、後ろを向きホーム確認をした。 ホームにはいまだこちらに手を振っている親がいる。 あの親の心情を想いながら私はアナウンスを流した。
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