少年の別れ

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24:00を過ぎて、運転停車もしばらく無いこの時間。 私は車内の見回りにでた。 消灯した車内はあなたが想像しているより暗いだろう。 窓の外にときどき通過する駅の照明が流れて行く。 懐中電灯でお客様を起こさないように注意しながら、車内をまわる。 途中4号車に入った時に、人影を確認した。 通路にある簡単座席にあの少年が座っていた。 「眠れないのかい?」 「はい、どうしても」 「宮崎で働きにいくのかな」 「そうです。親父が戦争で亡くなったので、僕が働かないと」 「そうか」 「頑張れよ」 「はい。ありがとうございます」 私と少年は小声で話していたが、最後だけは力強く聞こえた。 そうして私は先頭車まで行き、折り返し戻る。 4号車にはもう少年の姿はなかった。
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